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Second Hand World

伊佐治雄悟

2020.10.21 [水] - 2020.11.01 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(お菓子付き)

<会期中イベント>

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10月22日(木)20:30〜
「オンゴーイング・スタジオ 2020/10/22」
トークイベント:「What happens art in Göteborg?」
ゲスト:John Huntington(美術家)
https://youtu.be/HEF-dBUPp90


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10月24日(土)20:00〜
「オンゴーイング・スタジオ 2020/10/24」
トークイベント:「スウェーデン在外研修報告会」
ゲスト:安達七佳(美術家)
https://youtu.be/jFZlKQ-_os8

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10月25日(日)15:00〜
「オンゴーイング・スタジオ 2020/10/25」
Pre Ongoing School
作家本人による展示作品の解説を交えてのレクチャーを、インターネットで配信します。
https://youtu.be/oPcz0_gtxJ8

伊佐治はあまり感情を表に出さない。基本的に常にポーカー・フェイス。では冷淡な人間かといえば、その真逆で、メチャメチャいい奴だったりもする。顔には出ないが、とっても優しい。住んでいる家がOngoingに近かったせいもあるのだろうけど、困った時には一声かければ、いつでも必ず駆けつけてくれる。搬入で人手が必要な時、バイトの子がどうしてもシフトに入れない時、さらにはレジデンスの作家のオープニングパーティーで誰も人が来なそうな時など、「ちょっと頼みがあるのだけど」とメッセージを送れば「いいっすよ」とすぐに返信が来る。もちろん無表情のまま彼はメールを打っているはずだ。
伊佐治は12年前のオープン当初からOngoingに足を運んでくれている。初めは多摩美の先輩に連れられて来ていたのだと思うけど、それから一人でふらっと顔を出す時代を経て、最近ではパートナーの桃代ちゃんと連れ立ってやってくる。僕やバイトの子を除いたら、おそらく伊佐治が一番Ongoingに来てくれているのではないだろうか。この場所を気に入ってくれているのかもと想像するけれど、あのポーカー・フェイスからは読み解くことは難しい。もしかしたら今にも潰れそうだからと気遣って遊びにきてくれているだけかもしれない。
いずれにせよ、気づけば結構な長い付き合いになっていて、彼の作品もその間ずっと見続けてきた。伊佐治はどちらかといえば寡作であって、次から次へと新作を生み出すタイプの作家ではない。一度スタイルを確立するとそれをじっくりと作り続ける。ホッチキスの芯を一本一本解体しそれらをハンダ付けしていく作品や、プラスチックのカップやボトル容器にカッターで切れ込みを入れていく作品、またボールペンや洗剤の容器の一部分を熱し、そこに空気を吹き込みプクッと膨らませる作品、それと割れた陶器をグルンと裏返して金継ぎした作品などもある。これらを繰り返し作っていく。This  is "イサジパターン"(Ongoingでの個展のタイトルで、なんとvol.3まで続いた!!)。
作品を作っている時も伊佐治は無表情のままなのだろうかと疑問を覚えたことがあって、いい作品が完成した時にはもしかして少しだけ嬉しそうな顔をしたりするのかも、と淡い期待もあったのだが、一度ワークショップで彼が作品を作っている姿を実際に見た時、その想いはもろくも破れさった。だって、いつものあの無表情のまま、彼の手からはいつものあのクールな作品が出来上がっていたのだから。
そう、伊佐治の作品はいつだってクールなのだ。そこでは感情は排され、凛とした一つの彫刻作品が無言で立ち上がっている。そして、それこそが伊佐治の追い求めてきた美学なのかもしれない。ただしかし、あのポーカーフェイスの裏側にある、冷淡とは真逆の彼の本質が作品に溢れ出てしまうことはないのだろうかと思っていたのだが、今回の新作をみたら少しだけ安心できた。そこではクールなイサジパターンが崩れ落ち、溶けてグニャグニャになっていたからだ。
無表情、ポーカーフェイスと繰り返し書いてきたけど、伊佐治もお酒を飲んだ時には、少しだけニコっとしたり毒を吐いたりすることもあって、思わず溢れでてしまったそんな彼の感情が、僕はすごく好きだったりする。だから、今回の新作が彼の手の中から立ち現れた瞬間、微細だけど表情に変化が生まれていたに違いないと、変形したプラスチックを見つめながら、勝手にあの揺るぎない仮面の裏側を想像してみるのだった。
小川希(Art Center Ongoing)

伊佐治雄悟

1985 岐阜県出身 2008 多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業 2019 公益財団法人 ポーラ美術振興財団在外研修員としてスウェーデンにて研修