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プロモーション、世界!

柴田祐輔

2020.11.04 [水] - 2020.11.15 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(お菓子付き)

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11月7日(土)19:00〜
「オンゴーイング・スタジオ 2020/11/07」
Pre Ongoing School
作家本人による展示作品の解説を交えてのレクチャーを、オンラインで行います。
https://youtu.be/EVa5IoYEAzM

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11月14日(土)19:00〜
『IBC秘密社交パーティー』
¥1000 (シークレットドリンク付き)
要予約, 15名のみ ※オンラインなし

メイ「ウソじゃないもん」
タツオ(おとうさん)「お父さんもサツキも、メイがウソつきだなんて思っていないよ。メイはきっと、この森の主に会ったんだ。それはとても運がいいことなんだよ。でも、いつも会えるとは限らない」 

宮崎駿監督、1988年、「となりのトトロ」より

11月14日(土)に開催されます「IBC秘密社交パーティー」に関しまして、大変多くの方にお問い合わせ頂き誠にありがとうございます。
インターネットでIBCの事を調べて頂いた方も少なくないかも知れませんが、それは不可能だと言えるでしょう。彼らの活動内容、メンバーの本名、肩書きなどは一切公にされておらず、その存在はベールに包まれたまま、ひっそりとアンダーグラウンドで活動を続けているからです。

イベントに参加しようか迷っている方はどうか誤解しないで下さい。それを決めるのは貴方ではなく、IBCの方なのですから。幸運にも本イベントのご予約頂けた方に関しましても、誰でも参加して彼らとコンタクトを取れる訳ではありません。エントランスでは、貴方の額に銃の様なものを突きつけ体内の情報をスキャンした上で、その資格が認められた者だけが契約書を交わし、その境界線を跨ぐ事が許されます。その資格がないと判断されたら、場合によっては追い返されることすらあるでしょう。彼らは極めて排他的なのです。

IBCについて、イベントの内容についてここでお話しする事は禁じられておりますので、お答えする事は出来ませんが、ご予約後、当日アートセンターオンゴーイングに足をお運びになられ、貴方が秘密の社交パーティーに参加する資格が認められたのなら、それはとても運がいい事なんだという事だけお伝えできればと思います。その時は、どうぞ心ゆくまで濃密で芳醇な社交の時をお楽しみ下さいませ。

柴田くんの存在感は半端ない。圧が強い。とにかく濃い。Ongoingにやってくるとまず「Ongoingビールひとつください」と、そんなものメニューにないのに必ず注文してくる。歴代のキッチンスタッフは苦笑しつつも普通の生ビールを出すのだが、しかしこのくだり、いったい何年やっているだろうか。もしかしたら10年間ぐらいやっているかもしれない。本気でしつこいけど、それでもやはり面白いし、そして場は一気に和んでいく。そう、彼の場の雰囲気を掌握する力は尋常じゃない。居合わせた人々に対して畳み掛けるように冗談を飛ばし、その場を盛り上げていく。柴田くんがいれば、空間がしらけることは決してない。
彼がただのお調子者かといえばそんなことは決してない。状況を細かに観察し、それらを的確に描写あるいは分析、そして最終的に冗談として昇華するのだ。そんな芸当、よほど頭がキレなければできない。頭脳明晰、そして面白く、さらには気づかいも欠かさない。そんな柴田くんを、存在感が強すぎて「コワい」と評する人も少なからずいるが、わからなくもない。彼の怒涛の押しに負けてしまいそうになるのは当然だから。
そんないつもキレキレの柴田くんだが、ことアート、特に自身の作品に関してはストッパーが外れてしまう。そこでは、あの冗談まじりのニコニコした表情は消え去り、真剣すぎる眼差しの柴田くんが登場する。一点を見つめながらそして、もっといけるはず、もっとできるはず、とギリギリまで自身を追い込んでいく。彼の作品にかける熱量は狂気すら感じることが多々ある。
柴田くんがいつだって追い求めるのは、私たちが生きるこの社会を形作っているフェイクとリアリティの狭間だ。道路やビルなど街の表面を覆い尽くすカタログに並ぶ建築資材、照明で過剰なまでに演出された生活空間、そして全てを包み隠す蛍光灯の真っ白な眩い光。柴田くんは、そうした我々の社会を構成する人工的な諸要素をじっと観察し、それらを極限まで模写していく。そこに浮かび上がるのはフェイクで溢れかえる私たちの紛れもないリアルだ。
こうした柴田くんの作品から、現代社会に対するネガティブな批評性を読み解くのは容易いが、彼はそんな現代アートにありがちなちっぽけな作品を作る男では決してない。なぜなら柴田くんは、私たちが生きるこのフェイクにあふれた現実をむしろ全身で享受しているように思えてならないからだ。フェイクが加速しリアルを追い越す、その瞬間の恍惚。
彼がもしアーティストでなかったらどんなことをやっていたのだろうと時々想像することがある。学者? あるいは政治家?? いや芸能人???  きっとそのどれであっても彼なら成功していたに違いない。でもあえてこのアートという答えのないイバラの道を彼は選んだのだ。生まれながらに持ったあの強い存在感を潜ませながら、このイカれた社会をじっと観察し、そこに立ち現れる圧倒的にリアルなその瞬間を今日も柴田くんは待っている。もの凄いマジな顔つきで。うん、やっぱり柴田くんはコワい。
小川希(Art Center Ongoing)

柴田祐輔

アーティスト。1980年福岡県生まれ。2007年武蔵野美術大学大学院美術専攻版画コース修了。現実世界の曖昧さや不確かさに着目し、映像・写真・オブジェなど様々なメディアを使ったインスタレーションを国内外で発表。2019年に […]