小鷹拓郎
アーティスト、映像作家。1984年埼玉県生まれ。 これまでアフリカ、中東、アジア各国に滞在し、噂や忘れられた記憶をテーマにした映像作品を発表。ドキュメンタリーとフィクションを往来し、現実の社会構造にSF要素や噂話などを組 […]
2019.05.22 [水] - 2019.06.02 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(セレクト・ティー付き)
2018年にタイ・チェンマイのCMUアートセンターシアターで開催された個展「Political Planet X」の巡回展を開催します。
現在タイでは軍事政権下のもと日々表現規制が厳しくなっています。そのなかで、タイ各地で活動するアーティストらと一年間に渡り共同制作をおこない、イスラム過激派によるタイ新南部の爆弾テロ地帯、60年代に革命詩人が倒れた東北の森、バンコクの反政府デモ、そして13人の少年たちが遭難した北部の洞窟などを巡りながら3本のフィクションドキュメンタリーを完成させました。
日本初公開のSF映画シリーズとなります。
小鷹拓郎
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5月26日(日)19:00~
トークイベント&オープニングパーティー
「家族3人、アジアで生きても崖っぷち 〜タイ報告会第一部 日常生活編〜」
・タイで一年間、当時一歳だった息子と妻と家族3人でタイで暮らした日常生活について話します。
参加費:1000円(軽食+1drink+入場料)
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5月30日(木)19:00~
トークイベント「カナダ・バンクーバーのアート事情」
出演:原万希子、小川希
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6月1日(土)19:00~
トークイベント
「タイの地域アート最前線 〜タイ報告会第二部 アート編〜」
・昨年タイで開催された5つのビエンナーレや、爆弾テロ地帯として知られているタイ新南部パタニー、モーラムなどの音楽で知られるタイ東北部イーサンで活動するアーティストたちを紹介します。
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6月2日(日)15:00~
Pre Ongoing School
作家本人による展示作品の解説を交えてのレクチャー。お好きなケーキとお飲物がついてきます。
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Political Planet Xについての推薦コメント
小鷹拓郎が初めてタイで映画制作したのは十年以上も前になる。二度目は2015年、Gallery Seescapeで企画された「Shuffling Spaces」の参加アーティストとして彼はタイに戻ってきた。
その時わずか一カ月足らずの滞在であったが、誰もが信じられないほどの速さで作品を作り上げ、この国の歴史や文化に介入を試みる作品を発表した。どういうわけか、この二度目の滞在が彼を変えた。常に政治的な環境に置かれているタイのアーティストたちと時間を共にするうちに、表現規制下におけるアートの表現方法を模索するようになる。
さらに二年後、小鷹はタイに帰ってきた。今度の彼は一年間という滞在期間を得て、以前よりも広く、深いレベルでタイ人の深層心理を理解しようとし、軍事政権下において、どのように政治的メッセージを組み込んでいくのか、タイのアーティストたちと共に実践を始めた。
偶然にも、今年はタイにとって重要な一年となった。軍事政権四年目で大きなデモが全国で起こり、13人の少年サッカーチームが被害にあったタムルアン洞窟遭難事故が世界中でニュースになった。爆弾テロ多発地帯としか認識されていなかったタイ深南部の才能あるアーティストたちが頭角をあらわし始め、3つのビエンナーレの開幕によって国内外から注目された。
この一年、小鷹はタイで話題になった重要な出来事の現場へ逐一足を運び、カメラを向けてきた。また、人々から忘れ去られていた記念碑にも関心を示した。六十年代にタイ軍の凶弾に倒れた反体制派の詩人チット・プーミサックの慰霊碑。小鷹はタイ東北部の小さな街スコンナコーンの森を訪れ、チットの墓場と彫像を訪れた。これは殆どのタイ人たちは知らなかった、もしくは記憶から忘れ去られていた歴史的な場所である。そして、彼はあらゆる垣根を超えて、この国の様々なアーティストたちとコラボレーションしていった。
3つの映画、彼が体験してきたものは全てこの中にある。彼の凄さは信じられない速さで作品を作ることではなく、ユーモアと誠意を抱き、あらゆる人々とつながる才能にある。一年間を通して彼がタイで見てきたもの、体感してきたものがようやくひとつの形となり、私たちも作品を通して、それらを体感することができることだろう。
Atikom Mukdaprakorn (CAC – Chiang Mai Art Conversation 共同設立者)
近年、小鷹拓郎が制作する映画シリーズは、タイ深南部、および北部といった特定地域における徹底的な研究がなされている。タイ社会は昔から政治的な問題をひた隠しにしてきた。
もし、あなたがそういったことに気がついているのならば、きっと彼の映画に隠された小さな断片的な物語を見つけ出すことができるはずだ。それらはきっと「タイ-ネス」の真実を明らかにするだろう。
Penwadee Nophaket Manont (キュレーター)
現実的な日常と宇宙からもたらされた非現実的な超常現象が小鷹拓郎のドキュメンタリー映画の中で交差する。現代のタイ社会が抱える闇を鋭い視点と皮肉で見事に解体してゆく。
Lauren Reid (キュレーター)
小鷹拓郎は、政治の変革に努力しても何も変わらないので人々が疲れたり飽きてしまった日本やタイの国中をうろうろする。そういった場所で、それでもなお変えようとしている人たちに優しく手を差し伸べる。
その手を取った人たちと一緒に作品を作る。疲れた人に元気が戻るような、楽しい作品だ。もっといろいろな場所で作ったり見せたりしてほしい作品だ。
清恵子(キュレーター/メディアアクティビスト)
“あなたが他人に見えているものは、あなたの中に存在する”
私は小鷹拓郎の映画を見たとき、この曖昧な瞬間を思い出す。彼が制作した映画「Man from a Distant Planet」は、タイのイスラム教徒が多く住むタイ深南部で制作されたものだ。タイのイスラム教徒が持つアイデンティティは、一般の仏教徒であるタイ人と比べて未だに多くの問題をはらんでいる。
タイではこういった政治問題は日常的に潜在化しており、人々もまた、それが当たり前のものとして日常を過ごす。彼はそういった構造を視覚し、映画監督という立場から地元の人たちに問題を問いている。
Samak Kosem (アーティスト)
彼の作品のひとつ「Return of the Poet」は、社交的な男が伝統的霊媒師によって変貌を遂げる超現実主義で幻想的な批評性を含んだ作品だ。
現在進行系のあらゆる不平等な社会問題はトランス状態の男によって断片化され、全てのフィルターを通り抜けてやってくるだろう。
Jason Waite (キュレーター)
“バカにしてんの?” はじめは、誰しもが、小鷹拓郎の映画に不信感を抱くかもしれない。あるいは誰かは怒るのかも。しかし私は、アートは運動になると信じていて、それらが持つ可能性は,人々に、巨大で多様で複雑な感情の渦を生み出すことにあると思う。あなたもこの映画を見て考えるといい。
「この感情は正しいのだろうか?」
居原田遥 (キュレーター)
とりあえず、気になるモノにはトコトン全身全霊を捧げる。
そして臆する事なくその状況に飛び込んでみる。
すると、スルッとすっかり、みんな心を許し彼の友達になっている。
そんな人の心の中に潜り込む不思議な魅力を持つのが小鷹拓郎である。佐塚真啓(国立奥多摩美術館 館長)
シンプルで愉快、それでいて啓蒙的。
彼の作品「Man from a Distant Planet」は偏見や先入観を抱くことの危険性をテーマに、寛大な心で制作された宇宙映画だ!
Muhammad Arafat Bin Mohamad (キュレーター)
朝の霧、俺たちは森を彷徨い歩く
恍惚とした顔、憑依する幽霊、融解する暗闇
俺たちは巨大な金亀樹の下に横たわる
お前は敗北を謳い、小さな声で囁いている
俺たちの、俺たちの先祖の、俺たちの故郷のために
金亀樹にその名前を刻む
俺たちは永遠に彷徨い歩くのか
もしくは帰還し、この地を受け継ぐのだろうか
Taiki Sakpisit (アーティスト/映画監督)
この度Art Center Ongoingでは、小鷹拓郎 個展『Political Planet X』を開催いたします。小鷹はこれまで、アフリカ、中東、アジア各国に滞在し、噂や忘れられた記憶をテーマにした映像作品を発表。近年はドキュメンタリーとフィクションを往来し、UFOや宇宙人といったSF要素と社会構造、政治問題を融合させたSF映画シリーズの制作に取り組んでいます。 近年の代表作「村にUFOを誘致する」は、原発誘致に失敗した過去を持つ村における「原発」をUFOに置換し、村人の協力のもと制作されたフィクションドキュメンタリー映画です。巧みに交えられた独特なユーモアとフィクションは、鑑賞者へ、村と「UFO」の関係性についての考察を促します。 Ongoingでは5度目の個展となる本展は、2018年にタイ・チェンマイのCMUアートセンターシアターで開催された「Political Planet X」の巡回展となります。2017年、小鷹は文化庁新進芸術家海外派遣研修員としてタイに一年間派遣されました。当時のタイは、2014年に軍事クーデターによって従来の憲法と議会が廃止、2016年には70年以上に渡り在位し国民から敬愛を受けていた前プミン・アドゥンヤデート国王が崩御、新国王が即位。そして2017年4月には新憲法が公布、施行されるなど、現在まで続く急進的な変革の最中にありました。 軍事国家へと舵を切ったタイにおける表現活動への規制はとても厳しく、2017年以前にもタイでの滞在制作を経験していた小鷹は、その変化に驚いたと言います。そうした環境の元、小鷹はタイ各地で活動するアーティストらと一年間に渡り共同制作をおこないました。 本展では、深南部パタニーのイスラム過激派による爆弾テロ地帯、60年代に革命詩人が倒れた東北イーサンの森、そして13人の少年たちが遭難した北部のタムルアン洞窟を舞台に制作された、3本のフィクションドキュメンタリーをご覧いただけます。それぞれの映像は、小鷹が拠点としていたチェンマイ、バンコクの大都市での時勢の動きとも呼応しながら展開、連環を持つ三部作です。 ユーモアと知恵、そして人々とのつながりを持ってして、表現規制の網の目をすり抜けその抑圧の構造へ切り込んでいく小鷹。全て日本では初公開となる映像は必見です。週末にはタイ滞在中の家族との日常生活について、また現地のアートシーンに密着したトークイベント等もございます。 皆さまぜひ時間に余裕を持ってのご来場、小鷹ワールドを堪能しにいらしてください。 (津賀恵)
アーティスト、映像作家。1984年埼玉県生まれ。 これまでアフリカ、中東、アジア各国に滞在し、噂や忘れられた記憶をテーマにした映像作品を発表。ドキュメンタリーとフィクションを往来し、現実の社会構造にSF要素や噂話などを組 […]