早川祐太
1984年 岐阜県出身、東京都在住。2010年 武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了。 立っているということ、ものの質量、重力や空気、水の表面張力といった「現象」を取り入れ、彫刻やそれらを構成したインスタレーショ […]
2020.08.05 [水] - 2020.08.16 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(お菓子付き)
僕はかたちがすきなんだと思う。うん。すきだと思おうとしているのかもしれないという時もあったが、結局のところすきなんだというところに落ち着いている。美術に限らず何千、何万、何億年と続くかたちを創るという歴史の中で今更やることあんのかよって思うけどもあるある。ちなみにかたちっていうのは物体ってことではない。ちなみにね。もはや信仰に近いので、すきだと思おうとしているのかもしれない。
僕は僕と“僕以外(つまり世界。僕がいないと僕は世界を認識できない)”をかたちとそこにまつわる現象で捉えたりしていて、そこに介入していっていろいろいじくることで、自分をなんとか認識している。その介入っていうのがこれまた厄介。入り方によっては、ぺちぃ〜んとはじかれたり、ごぽっとのみ込まれたり、ほっとかれたりする。それで怪我したり自分を見失ったりたりする。しょっちゅうだよ。そんなことを繰り返していると、ぽこっと僕と僕以外が入れ替わったりする。
これはいいかたち、わるいかたちの話ではなく(そういうのはない!)僕と僕以外のいい距離感という感じだ。そこには、こっち側の“つくる”っていうのと、向こうの“できる”っていうのと、お互いの居方(イカタと僕は読んでいて勝手にあると思っている言葉。存在の仕方のことだけどイカタっていう音が気に入っている)ってーのがあって、それが大切だ。バランスとりゃいいってもんでもなかったりする。COVID-19もがっつりびびった上で僕にとっては一緒です。
“Shape for Shape”はそういった僕のことや、作品と僕の関係だったり、作品自身のことだったり、作品と僕以外のことだったりする。展示する作品はi am you という作品シリーズの新作(ちょっと新たな試みだよ)でyouっていうのは僕以外のこと。いつもだけど我ながらなんのこっちゃわからん文章ですいません。これでもはっきりさせようと頑張ってみたんだ!
きっと続けていると、「つまりはもはや好きかどうかもわからんが!!」と振り出しに戻るのだろう。すいません。みてください。彼らの方が雄弁だし・・・
2020.7.14 早川祐太
<会期中イベント>
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8月4日(火)19:30~
「オンゴーイング・スタジオ」2020/08/04
『かたちについて(Pre Ongoing School)』
ゲスト:冨井大裕
https://youtu.be/GtWcVVl63as
冨井大裕さんをゲストに今回の展示を軸にかたちについてのあれやこれや。
展示作品の解説を交えてのレクチャーをインターネットで配信します。
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8月8日(土)19:00~
「オンゴーイング・スタジオ」2020/08/08
『自分の本体:身体とか精神とか社会とか』
ゲスト:衣川明子(アーティスト)、二藤建人(アーティスト)
https://youtu.be/raSBUXVxQ9E
さまざまな角度から自分の捉え方について、衣川明子さん、二藤建人さんをゲストに迎え話をします。
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8月15日(土)19:00~
「オンゴーイング・スタジオ」2020/08/15
『最近の衝撃「私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない」を読んで』
聞き手:小川希(Art Center Ongoing)
https://youtu.be/taUS_Fp2Bh8
最近でいちばんのおすすめ図書「私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない」を紹介します。
Ongoingをはじめてちょうど1年目ぐらいだっただろうか。武蔵野美術大学の卒業制作にぶらりと足を運んだことがあった。時間をかけて沢山の作品を堪能したのち、最後に当時助手をしていた冨井さんに挨拶をしようと彫刻家の研究室に顔をだした。「院生がとなりで展示しているから見ていったら」と言われ、そこで出会ったのが早川くんだった。とても人当たりの良い青年で、にこやかに、時折冗談を交えながら自身の作品について熱心に話をしてくれた。たしか早川くんはその年に卒業ではなかったのだけど、発表したい欲求が止められないようで自主的に展示を行っていたのだと思う。気取らず、話も上手で、はじめから好印象だったのだが、そんな彼自身のキャラクターと彼の作品のギャップがどこか印象に残った。 早川くんは、重力、静電気、表面張力など、普段は意識することのないこの世界に存在する様々な現象を利用し、それを可視化するような彫刻やインスタレーションで知られる作家だ。あの日見た彼の作品でも、すでにその方向性ははっきり見えていて、すぐに興味が湧いたのだけど、どの作品もすごくしんとしていて、感情を排しているような、どこか冷たい印象を覚えたのだった。あくまで僕の経験上の話だが、作品は作家とどこかで似ているというか、あの作家がこの作品を作ったと聞けば大抵納得がいくものだったりするのだが、早川くんの場合は、本人の気さくな感じと作品の佇まいがどうも繋がらなかった。 それから後、早川くんはOngoingにもちょくちょく顔を出してくれるようになった。いつもハートランドの瓶ビールを頼んでは「生ビールよりこっちの方がコストパフォーマンスがいい気がするんすよ」とおきまりのセリフののち、大学のことや同世代のアーティストのことなど、いろんな話をしてくれた。誰とでも打ちとけられる性格で、毎年恒例だったOngoingの夏のキャンプにも顔を出し、彼より少し上の世代のアーティストとも朝まで飲みあかしたりもした。当時まだ小学生だった僕の甥っ子がそのキャンプに来たことがあって、早川くんが「カブトムシ取りいくか」と彼を連れ出し、クワガタとカブトムシをいとも簡単にとってきてくれて、甥っ子にとって早川くんは頼れるお兄さんでもあった。 そうして徐々に、僕の方からいくつかの展覧会に声をかけるようになっていき、初期のOngoingにとって早川くんの存在は欠かせないものとなっていた。今では当たり前になったけど、上の世代に混じって早川くんのような若い作家が一緒に展示をしたり、お酒を飲んでいるOngoingのそんなフラットな風景が僕は好きだった。 そんな早川くんが最後にOngoingで展示をしたのは今から9年前。ああ、もうそんな前なのかと驚いてしまうが、まさにその最後の展示の期間中、早川くんは突然身体に大きな問題を患ってしまう。今思えば、そのことが一番大きかったと思うし、コマーシャル・ギャラリーへの所属やその他にも僕の知らない沢山の変化があったのだろうけれど、いずれにせよ早川くんが昔のようにOngoingに顔を出すことはこの9年の間ほとんどなくなったのだった。その間、早川くんは一人の作家として着実にキャリアを積みあげていった。彼の展示にはできる限り足を運ぶようにしていたが、彼がいろいろな舞台で活躍するのを見ることが嬉しいと同時にどこか少し寂しい感じもしていた。 そして時は流れ、あの日クワガタとカブトムシをとってもらった甥っ子は、何の因果か武蔵野美術大学に昨年入学。早川くんも同大学の講師になっていることをふと思い出し、久しぶりに連絡を取りそのことを伝えると「マジですかー、じゃあ学校で探してみます!」と昔と同じような返事がすぐに帰ってきたのだった。それがきっかけかはわからないけど、ちょっとしてOngoingに遊びに来てくれてビールを飲みながら話をすることがあった。随分と久しぶりな気がしたが、最近の制作のことやプライベートのことまで、ハートランドの緑のボトル越しに、在りし日はすーっと蘇っていくのだった。ただ、ひとつ昔と変わったことがあり、それは早川くんの佇まいで、なんというか彼は落ち着き払い、凛としていた。その時、彼の作品と彼自身とが重なって、僕が早川くんと出会った頃に感じたギャップがもうそこにはすっかりなくなっていることに気づくのだった。 きっとこの9年の間にいろいろな経験を経て、早川くんは作品を作ることや作家としての気負いのようなものを無理に持つことを必要としなくなったのだろう。彼が作品の対象としている様々な現象と同じように、一人の人間としてただそこに存在すること、そして自然と作品ができ上がっていくこと、そんなあるがままの境地を早川くんはいつのまにか獲得しているのだった。僕はそのことが何だかすごく嬉しくなって「またOngoingで個展をしませんか」としばらくして彼にメールを送ったのだった。 小川希(Art Center Ongoing)
1984年 岐阜県出身、東京都在住。2010年 武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了。 立っているということ、ものの質量、重力や空気、水の表面張力といった「現象」を取り入れ、彫刻やそれらを構成したインスタレーショ […]