高橋大輔
1980 埼玉県生まれ2005 東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業2019- 東京造形大学非常勤講師 個展2021「青いシリーズ / どうして私が歩くと景色は変わってゆくのか」second2. (東京) […]
2023.08.23[水]_ 2023.09.10[日]
12:00‒21:00(月火定休、水木金は16:00〜18:00まで一時休憩)
入場料: 400円(セレクトティー付き)
「アシャン」
数年前の記憶。
たまに行くコンビニにアシャンさんは居た。
褐色の肌に、スマートな体型。男性。ストライプのコンビニのユニフォーム。
手際よく、気持ちのいい接客をしてくれる人。声が若干高めで優しめ。流暢な日本語を話し、礼儀正しい。
そのコンビニに3回立ち寄れば、アシャンさんに1度はあたる。そんな人。
ついこの間の記憶。
夜遅くに仕事から帰ってきて、私はそのコンビニに寄った。
アシャンさんがおにぎりコーナー周辺で品出しをしていた。お、彼がいるぞと、ただそう思う。
私が雑誌コーナーに目をやって歩き出したとき、グラッと地面が揺れた。
けっこう大きい地震だとわかったと同時に、頭の中が軽い貧血のようになった気がした。大丈夫か?
商品棚と一緒に私とアシャンさんも揺れ、その場に取り残されたまま、揺れる店内広告を眺めていた。無力。
私は不安でアシャンさんをみた。アシャンさんは品出し途中。しゃがんだままの姿勢で、微動だにしない。
アシャンさんも私のことをみている。彼は冷静だった。
揺れがグラデーション状におさまる。お互い目を見て、よしと頷く。連帯意識が生まれた瞬間。すぐさま品出しに取りかかるアシャン。
上手く言えないが、私にとってあなたは不思議な友達だ。仕事ができるナイスな人だ。幸せになってほしい。その日はビールを買って帰った。
それから半年だろうか、もしかしたら1年くらい、彼を店で見かけなかった。
ついこの間のこと。天王洲での個展を終えて私は一息ついていた。秋も終わりを迎えた11月の明るい日中、そのコンビニに彼はいた。
私は商品を選び、アシャンにレジ打ちをしてもらっていた。いつものアシャンの声とスパイシーな香水の香りがした。商品の手触り。五感。
なぜだかそのとき、アシャンを描かなくてはいけないと感じた。一方でアシャンを描きたいと思ったときに、それはどういうことかと考えた。
私は彼のことをほとんど何も知らないのだ。でも、だからこそ描きたい。 やれるだろうか? やれないだろうか?
そんなゆらぎながらのモチベーションは心地良かった。しばらくして白と鮮やかなブルーで絵を描きたいと思った。
彼が着ているコンビニのユニフォーム、店の外観のイメージ。それから唐突に、数年前に職場のアトリエで見た、後輩の絵を思い出した。横長の120号、白地にブルーのストロークが何本も重なっていた。みた瞬間に嫉妬した絵だったが、後輩曰くまだ筆の運びの練習中で、まだ下地段階だと教えてくれた。
私の脳内では、青い線が発光し、グニャグニャとからみあう。 この絵の具の順列!
そしてアシャンの人生を想像する。暑い日差し、家族、レンガ、南国的な木。海を越え日本にやってきたアシャン。
空の青、波の青、ユニフォームのブルー、ネイビー、ホワイト。そして後輩の絵のコバルトブルー。私は非力で、わからないことだらけだが、青いということはわかる。何かを表せる気がする。
わかることとわからないことの海で泳ぎたい! 次に描くべき絵が決定される有難い時間。寄せては返す喜びの波を、わたしは噛み締めていた。
2022.11.16 高橋大輔 (制作メモより)
この度、Art Center Ongoingでは、画家・高橋大輔の個展「アシャン」を開催します。高橋は1980年埼玉県生まれ、東京造形⼤学造形学部を2005年に卒業後、ペインターとして活動しています。近年では、αM「『約束の凝集』vol.5 RELAXIN’」やANOMALY「絵画をやる-ひるがえって明るい」など、デビュー当初から高橋の代名詞であった油絵の具を厚塗りした立体的な絵画表現から、実験的な絵画表現を模索しています。
今回の個展では、高橋がコンビニで出会った一人の人物「アシャンさん」へのイメージを油絵に変換させていく一連の試みが展開されています。これまでの高橋の絵画作品は「モノの現実」が意識されており、具体的なモチーフを作り上げるような筆の動きや色彩の重なりがキャンバス上で行われていました。本展「アシャン」では一度そこから離れ、高橋の意識がモノからイメージへと変化したさまを感じとれる作品群となっています。
数回言葉を交わしただけの、ほとんど知らないはずのアシャンさんに、高橋は信頼のような好感のような友情とも言えるような、心地よい感情を抱きました。その温かく、けれど少し距離のあるイメージをそのまま描きたいという衝動から、ブルーとホワイトのカラーが立ちあがったといいます。リズムを奏でているようにも見える線の扱い方は油絵に移す以前のドローイングにも現れており、高橋曰く「リアリティを感じたドローイングをタブローに落としこんでいる」とのこと。そうした行為から、「描くことでアシャンさんを理解することはできないけれど、わからないまま表したい」という高橋の画家としてのポリシーを伺うことができます。
本展示では、ブルーとホワイトの「アシャン」シリーズのほかに、オレンジを基調にしたシリーズ「パートナー」を出品しています。本シリーズは地元のお祭りの夜に、アシャンさんとそのパートナーと思しき女性が歩いている光景から着想を得たのだといいます。彼女の履いていた鮮やかな靴の色が印象に残ったと語る高橋は、その靴の暖色が今までに描いていた「アシャン」シリーズと反対色になっていることに気がつき、偶然の出会いや発見を楽しみながら絵画に向き合っていくことになりました。
「アシャン」と「パートナー」というふたつのシリーズが存在し合う本展の会場で高橋の感じた“イメージ”を、そのまま受け取るような鑑賞体験をぜひこの機会にお楽しみください。
(Art Center Ongoing 手塚美楽)
8月26日(土)19:00-
オープニングパーティー
1,000円(軽食+1Drink+入場料)
8月31日(木)16:00-
夏の感謝day
参加費無料:(アイスキャンディー付き)
8月最後の日、この暑い夏を乗り切ったご褒美に、アイスキャンディーを食べながら最高な映画をみんなで一緒に鑑賞しませんか?
上映するのは不朽の名作、山田洋次監督の『学校』(1993年、128分)です!
9月8日(金)16:00-21:00
1日相談員
※台風接近のため本イベントは中止となりました。
https://www.notion.so/SOUDAN-4c3d569de4b34a04bb78ec49ceb70f91
アーティストはたった一人で孤独に作品を作るのでしょうか。そういう場合もあるでしょうが、それだけが唯一の「アーティストのやっていき方」ではないはずです。展覧会の始まる前から、そして終わった後も、さまざまな人との協働があります。まだ固まってないアイデアを口にしてみること、具体的な技術的相談、機材や場所や運搬手段の話、ちょっとした専門知の共有、プロジェクトへのお誘い、悩みの打ち明けーーこれらをひとまず「SOUDAN(相談)」といってみます。
「SOUDAN」という視点から考えてみると、たとえばアーティストとキュレーターの関係は、たんに「展覧会に呼ぶ/呼ばれる」といった関係にとどまらない、ということに気づかされます。あるいは、「全ての情報が確定してから専門家に依頼する」という「雇用」や「契約」や「発注」といった関係性とは少し違うダイナミズムが垣間見えてきます。
とくに、若い学生や、卒業したばかりの駆け出しのアーティストは、自分のアイデアを実現するために、あるいはもっと深くおおらかに思考を進めるために、誰かと話してみること、相談をしてみることは大切な(とても楽しい)機会になるはずです。
長谷川新(インディペンデントキュレーター、相談所SNZ)
森純平(建築家、相談所SNZ)
9月10日(日)15:00-
オンゴーイングスクール
1,000円(お好きなケーキ+1Drink+入場料)
中高生にもわかる作家本人による展示作品解説
同時開催:
高橋大輔「アシャン」 by ANOMALY
https://cadan.org/cadanyurakucho_anomaly02/
開催期間:2023年8月8日(火)〜27日(日)
開廊時間:火〜金 11:00 – 19:00 / 土・日・祝 (11日・金) 11:00 -17:00 / 休廊日:月曜日
会場:CADAN有楽町
1980 埼玉県生まれ2005 東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業2019- 東京造形大学非常勤講師 個展2021「青いシリーズ / どうして私が歩くと景色は変わってゆくのか」second2. (東京) […]