伊佐治雄悟(アーティスト)
毎年毎年赤字で潰れると言われ続けてきた、Art Center Ongoingが10周年を迎えるようです。おめでとうございます。そのマゾヒスティックな経営手法には、私を含めた多くの作家たちが救われてきました。今オンゴーイングでの思い出を振り返りながら、感謝の気持ちが溢れてきます。
思い出に浸っていたら、ローリングストーンズが来日の際にテレビ番組でインタビューを受けていたのを思い出しました。
「ここまで長く活動を継続できた秘訣は?」と問われたミックジャガーはすぐに、「成功してるから」と答えました。当時確か高校生くらいだった私は「なんかすごい!」と思ったのですが、今考えると随分退屈で夢のない答えだったなーと感じます。ローリングストーンズは、黒字企業だったのです。
世の中には儲からなくても、褒められなくても続けないといけない事がたくさんあります(或いは続けちゃう人が)。なんでそんなに辛い事を、続けないといけないのでしょう? 一体何の為に、やっているのでしょうか?
その答えを説明することも、いつか出来るかもしれません。ただ、それは成功し続けることや、儲かり続けることと違って、言葉で表すのが難しい。思い浮かべてみても、すぐに反例も浮かんで消えてしまう。
私は、誰かが他人から見ると要領の悪いことや説明がつかない何かをすることに、人間味を覚え、ある種の崇高さを感じます。常にじゃないけど。その崇高さの源泉を突き止めようと、お付き合いを続ければ続けるほどその人のことがよく分からなくなり、言葉に出来なくなってしまう。正直オンゴーイングが何の施設なのか、もう私には分からない。
最後に、一応補足すると成功した人や黒字のものを、否定しているわけではないのです。オンゴーイングが黒字化したらどんなに素晴らしいか、といつも思っています。ただ、一つはっきりしているのは、オンゴーイングはこれからも赤字だってことです。だからこの場所が存続する限り、私は何かを続ける事について考えさせられるのでしょう。
私も無名なまま、あまり儲からないまま活動を続けてきました。それを引っ張ってくれたのは、Art Center Ongoingとそこに世界中から集まった皆さんです。ありがとう。今後ともよろしく〜。