Art Center Ongoing

SEARCH EXHIBITION & ARTISTS

《赤いドミナント! ongoing 》

大木裕之

2024.9.25[水]_ 2024.10.13[日]
12:00‒21:00(月火定休、水木金は16:00〜18:00まで一時休憩)
入場料: 400円(セレクトティー付き)

大木裕之(おおき・ひろゆき)、通称・大木さん、なんと今年で御年60歳なのだそう。以前、大木さんについて書かせてもらった拙文で、その存在を妖精のようだと言及したことがあったけれど、それからさらに進化(?)して、今や仙人になられたかもしれない。俗世とは一線を画す、大木さんの生き様を思い浮かべると、まさにそれがしっくりくる。
仙人・大木さんに常識なんて通用しない。予定、ルール、そんな言葉はあってないようなもの。そもそも、大木さんに初めて出会った人は、まずは皆ギョッとしてしまう。雑誌の表紙モデルにもなるほど身長がスラリと高く見た目もかっこいい大木さんだが、ピチピチの薄着を見に纏い、裸足で街中の道に座り、タバコを吸ったりお酒を飲んでいたりする。美術館やギャラリーであっても、突如として床で横になり、いびきをかいて寝てしまうこともざらにある。そのどれもが、外連味などとは縁のない、ごくごく普通の大木さんのスタイル。ルールや常識なんてものに、どっぷりと浸かった現代人にとって、信じられない光景が大木さんの周りにはいつも広がっている。
はじめギョッとはするけれど、それでも皆すぐにそんな大木さんの虜になってしまう。かくいう私もその一人。大木さんがぶらりとOngoingにやってきたりすると、ついついタダ酒を出してしまうし、街中で偶然出会ったりした日には心が躍る。そもそも街中で偶然人と出会うなんてこと人生でそんなにはないはずなのに、大木さんとは本当にいろいろな場所で出会うのだ。「あら、あんた、なにしてるの?」ってね。
そんな大木さんとも長い付き合いになったが、この仙人の口から発せられる印象的な言葉がいくつかあるので、ここで紹介したい。まずは”テキギ”という言葉。状況に適していることや、各自で判断すること、最善の判断をすることといった意味の言葉であるが、大木さんはこの言葉を多用する。展示のこととかで、何かを尋ねたりすると、必ずといっていいほど、この言葉が返ってくる。次に”タイミング”。これもよく大木さんが使う言葉。何かをするのに最も適切な時間や瞬間のことだが、先の”テキギ”にも通じる言葉だろう。そして最後の言葉は”アクション”。「全てはアクションだから」という大木さんの言葉を、最近は特によく聞くようになった気がする。生きていく中で、大木さんは常にアクションし続けているのである。
テキギ、タイミング、アクション。どれも大木さんの存在を象徴しているような言葉。つまりは何も確定していないということなのか??? その人物像からだけでなく、大木さんが作り出す作品からも、この三つの言葉を感じ取ることができるだろう。一歩、その展示空間に足を踏み入れれば、大木さんの日常がそこには広がっている。本やDVD、脱ぎ捨てられた下着や靴、飲み掛けのお酒、数10年も昔に撮られた写真、電車の切符、昨日スーパーで購入した物のレシート。それらがテキギ、タイミングを見計らった、アクションの結果として散在している。
映像はどうだろうか。大木さんの作る、映像は一度見たら、二度と忘れられない。台本なんてもちろんない。大木さんのアクションの連続が、テキギ切り取られ、ここしかないというタイミングで編集されているのだ。そんな大木さんの映像を見ていると、時にクラクラしてくるのだが、それはカット編集の速さからだと思っていたが、実のところ、確定することなんて決してありえない私たちの生きるこの世界の構造がそのまま定着しているからなのだと最近気がついた。だって生きていればクラクラするでしょ?
予定調和と無縁の大木さんのことを書いていると中々文章も終わらない。そういえば、私も大木さんと同じ辰年生まれで、ちょうど一回り年齢が違う。あと12年後、こんなにかっこいい仙人に自分はなれるだろうかと、いつもと変わらず、真っ昼間の道端で、身の回りのものを全てぶちまけ、ウイスキーをお供にタバコを吸う大木さんを見ながら、先日、ふとそんなことを思った。大木さんがいる限り、日本の現代アートとやらも、まだギリギリ大丈夫だな、とも。
(Art Center Ongoing 小川希)

会期中イベント

9月28日(土)19:00-
超即興オープニングパフォーマンス
Ongoingシェフ・シズエさんとの食に関してのコラボレーション企画
加費:1000円(入場料含む 軽食と1drink付き)


10月5日(土)19:00-
大木さん還暦おめでとうございます!!パーティー
参加費:1000円(入場料含む 軽食と1drink付き)


10月13日(日)15:00-
オンゴーイングスクール

参加費:1,000円(入場料含む お好きなケーキと1drink付き)
中高生にもわかる作家本人による展示作品解説

大木裕之

1964年東京生まれ。東京都、高知県在住。大木裕之は、映像というメディアを通して、「思考すること」を真摯に探求し続けることにより、我々の生きているこの世界を捉え、肯定し、また更新することができる稀有な作家である。大木は東 […]