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The Hero’s Journey
昼と夜のあいだ

利部志穂

2024.6.12[水]_ 2024.6.23[日]
12:00‒21:00(月火定休、水木金は16:00〜18:00まで一時休憩)
入場料: 400円(セレクトティー付き)

利部がOngoingに初めて遊びに来てくれたのが何の時だったかはもう覚えてないけれど、とにかく良く喋るエネルギーに満ち溢れた彼女のファーストインパクトは15年ほど経った今でも強い記憶として残っている。その存在感からか、アーティストの仲間内では一目置かれていて、ちょうど武蔵小金井の廃墟のようなスペースで私が企画する展示の予定があったので、そこに彼女を誘ってみることにしたのだった。地下の会場にて彼女が発表した作品は、つなぎ合わせた木材、金属の棒、観葉植物、水槽の中の金魚、そして青い羽と黄色の尾を纏った言葉を話す鳥などで構成されていた。その空間は、一度喋り出したら止まらない彼女の普段の様子からは想像できない、静かで美しい詩的な雰囲気に包まれていた。私は強く心を動かされた。
それ以降、利部には、Ongoingの400円の有料展示の第一弾を任せたり、この場所以外の展示にも色々と参加してもらったりしてきた。彼女の才能を認めているのは当然のことなのだけど、加えて彼女の人間性を私は信用している。利部にはアーティストにありがちな外連味がない。なんというか、とても素直で正直なのだ。嫌いなものは嫌いとはっきり言うし、相手が誰であろうと、偉そうなヤツや無礼なヤツはばっさりと切る。昨今のアートの流行なんてのも全然気にしないし、真っ直ぐと自分の信じる道を進んでいて、その姿勢がとてもかっこいい。
彼女の制作のスタイルも、そうした性格を体現しているかのよう。事前に入念にプランを練ってそれをきっちりと遂行する作家は多いけれど、利部はそれとは全然違っていて、会場で即興に近い形で空間を作り上げていく。もちろん、空間を構成する素材は事前に用意しているけれど、その時、その場で感じたインスピレーションに従って、バラバラな素材たちは、あれよあれよと作品へと昇華していく。彼女の判断に迷いはない。時に、利部が自身のことをサンライズサーファーと呼ぶことが、その姿勢をもの語っているのかもしれない。大きな光の波が来た時に飛び乗れるように、彼女はいつも静かにそのタイミングを待っているのだ。
今回の「The Hero’s Journey 昼と夜のあいだ」では、世界中に存在する「神話」の基本構造や、時間や場所の境界を指す「神域」への言及を試みたいと話してくれた利部。この世界を構成している(と信じられている)大きな力ではなく、淡く曖昧でそして細やかなものを表出しようとしているのだろう。果たして、利部の作品は成熟してますます静かで美しくなってきているけれど、彼女の衒いのないとにかく良く喋るあのうるささはずっと変わらないでほしいなぁ。
(Art Center Ongoing 小川希)

会期中イベント

6月15日(土)19:00-
キッチンでホックニー。オープニングパーティー

BGM:皮
1,600円(軽食+1Drink+入場料+music

6月16日(日)17:00-
『政治と芸術』
<わたしたちには、なにもできない?>

場所:Art Center Ongoing 1Fカフェ
参加費:無料


6月21日(金)20:00-
東野哲史の香港報告会

要ワンドリンクオーダー


6月22日(土)19:00-
対談
阿部真弓(美術史家)×利部志穂

1,000円(1Drink+入場料
阿部真弓(Mayumi Abe)
1977年、東京生まれ。美術史研究者。
ボローニャ大学Scuola di Specializzazione in Storia dell’Arteにて近現代美術史と様式現象学を修める。ジョルジョ・デ・キリコの研究から出発し、20世紀初頭の西洋美術とその日本を含めた受容および世界的同時性に関する調査研究をおこなう。『複製技術時代の芸術家による美術史――1910-20年代の西洋絵画における古典古代と現代』(論文博士、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コース、2021年)。共著に、『磯崎新の建築・美術をめぐる10の事件簿』(磯崎新・新保淳乃との共著、TOTO出版、2010年)。担当した展覧会に『シュルレアリスム展:パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による』(国立新美術館、2011年)。エッセイに、「松本陽子:ピンクの反転」『国立新美術館ニュース』No.12、2009年;「魂の半=悲劇的ランドスケープ」『堂本右美:いきる』展カタログ、横須賀美術館、2011年;「近代の跡地(1、2、3)」『引込線』展書籍(2013年、2015年、2017年)など。
https://hikikomisen.org/jp/artist/mayumi_abe


6月23日(日)16:00-
オンゴーイングスクール

1,000円(お好きなケーキ+1Drink+入場料)
中高生にもわかる作家本人による展示作品解説

利部志穂

1981年神奈川県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2014年KAKEHASHI Projectにてニューヨーク、LA滞在。2017年より文化庁新進芸術家海外研修制度の助成を得て、2年間ミラノを拠点に活動 […]