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turn

冨井大裕

2017.12.06 [水] - 2017.12.17 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(セレクト・ティー付き)

出品作品について
大学で「彫刻と呼ばれているもの」を学んだ私が、卒業してから付き合いを持った友人の大半は画家である。似たような体験をしてきた「同業者」に興味を持てなかったという理由もあるが(註)、未体験の領域や場所に接してみたいという欲求があったのだと思う。
ここで言う「接する」とは、体験することだけではない。自身の置かれている場所から異なる状況、時間、空間を想像するということ。「違いのわかる◯◯◯」というフレーズが昔のコマーシャルにあったが、別にわからなくても良いのではないだろうか。私たちが「わかる」という言葉を発する時、何をわかっているのか。わからないまま違いに接すること。
自身の置かれている場所を「自分の場所」と呼んでみる。その場所を好きになれるか否か。なかなか好きとは言い切れないのではないか。とは言え、嫌いとも言えない——最良ではない場所。違いと接することから、そこがどんな場所かを考える。
今回の作品の工程——⑴紙に絵の具を塗る⑵塗ったところを切り抜く⑶それを裏返す⑷裏返したもの同士を繋げる→完成。色彩のあるレリーフである。着彩されたレリーフではない。形の上に色を塗るのではなく、色/絵の具を塗るということを形にしていく。一枚の紙から起こる出来事であり、できた形は紙の形でもある。偶然性はあるが、自由度は少ない。目の前の形は少し前には裏であった。遠いと思っていた場所が近づいている。自分の場所は本当にあるのか。

2017年10月
冨井大裕

註:2012年よりはじめた彫刻の活動「AGAIN-ST」を通じて、彫刻を改めて勉強している。
AGAIN-STについては以下を参照。
http://www.nadiff.com/?p=5431

トークイベントについて
2012年に「美術をデザインすることについて」というイベントを開催した(註)。狙いは「美術展で制作される印刷物を、広報や記録、資料の為のツールとしてだけではなく、実際の作品体験と同一線上に位置する別種の美術体験として捉え」、「制作者の観点から美術とデザインの関係を考える機会」をつくるということであった。5年経った現在、このような試みは珍しいことではなくなったように思う。展覧会と印刷物の関係はより重要なものとして認知されている筈だし、学生や若い作家、新しいギャラリーの広報物などに意欲的な印刷物を見かけるようになった。しかしながら、実際はどうなのだろうか。美術作品/展覧会の印刷物をつくることは、記録を超えて美術をリクリエイトする作業にまで達することができているのであろうか。作品/展覧会(の記録)という素材や予算という制約がある中で、そういった作業はどこまで可能なのか。そもそも、(印刷物の)実作者たちはそのような可能性を欲しているのか。記録でしか展覧会を伝えられない作家の私からすると、2012年の当時より現在は複雑であり、興味深い。今回は、私が関わっている展覧会「引込線2017」の印刷物を制作している方々(1日目)と、私の作品集を出版する「RONDADE」の編集者(2日目)をお招きする。美術の印刷物をつくることについて、印刷物に期待を寄せる人々が様々な思いを巡らせる時間としたい。(冨井大裕)

註:イベントの詳細は以下を参照。
http://www.ongoing.jp/gallery/tomii2012.html

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12月6日(水)18:00~
オープニングパーティー
参加費:¥1000(軽食+1drink+入場料)

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12月15日(金)19:00~
トークイベント:美術を印刷物にすること| ⑴「引込線2017」の印刷物
ゲスト:櫻井 拓(編集者)、森大志郎(デザイナー)、加藤健(写真家)
聞き手:石川卓磨(美術家、批評家)
参加費:¥1000(1drink+入場料)

森大志郎
1971年生まれ。美術展や映画祭カタログ等のエディトリアルデザインを主に手がける。主な仕事=東京都現代美術館MOTコレクション展覧会シ リーズ、『MOTアニュアル2011』(東京都現代美術館)、東京国立近代美術館ギャラリー4 展覧会シリーズ、『ぬぐ絵画』、『ヴィデオを待ちながら』(東京国立近代美術館)、『Dan Graham by Dan Graham』『瀧口修造とマルセル・デュシャン』(千葉市美術館)、『Grand Openings, Return of the Blogs』(ニューヨーク近代美術館)、『パウル・クレー おわらないアトリエ』(京都国立近代美術館)、『清方 ノスタルジア』(サントリー美術館)、『蔡国強』(広島市現代美術館)、『「出版物=印刷された問題(printed matter)」:ロバート・スミッソンの眺望』(上崎千との共作『アイデア』320、誠文堂新光社)「Rapt! 20contemporary artists from Japan」(国際交流基金)など。

櫻井拓
フリーランスの編集者。1984年宮城県生まれ、京都府在住。アートに関わる本や印刷物(作品集、展覧会カタログ、批評書など)の編集。芸術批評誌『ART CRITIQUE』を編集発行。そのほか教育や経済、広告などの分野で、本や記事の構成と編集。愛知大学文学部メディア芸術学科など非常勤講師。最近の仕事に『池内晶子|Akiko Ikeuchi』 (gallery21yo-j、2017年)、「Artist Interview 竹岡雄二」(『美術手帖』、2016年4月号)、『引込線 2015』(引込線実行委員会、2015年)など。

加藤健
1977年生まれ、福岡県出身。2002年、武蔵野美術大学彫刻学科卒。
大学在学中より写真家 中野正貴氏のアシスタントを務め、2002年フリーランスフォトグラファーとして活動を開始。
美術作品やインスタレーション風景、アートドキュメント(制作の現場やアートパフォーマンス等)の写真を撮影。
引込線は2011年、2013年、2015年、2017年と過去4回撮影を担当。

他の撮影実績として、ヨコハマトリエンナーレ2011-2014-2017、「新次元 マンガ表現の現在」「CAFE in Mito 2011」(水戸芸術館)、「石子順造的世界」(府中市美術館)、「TARO賞の作家Ⅱ」(川崎市岡本太郎美術館)、「未見の星座」(東京都現代美術館)、「キュッパのびじゅつかん」(東京都美術館)、「NEW VISION SAITAMA 5 迫り出す身体」「遠藤利克展ー聖性の考古学」(埼玉県立近代美術館)、資生堂ギャラリー、トーキョーワンダーサイト、横浜美術館、横浜市民ギャラリーなど。他多数。

石川卓磨
1979年千葉県生まれ。美術家、美術批評。
主な評論に「カエサルのものはカエサルに!――鈴木清順における「ルパン三世」と「浪漫三部作」」(『ユリイカ2017年5月号 特集=追悼・鈴木清順』、青土社、2017)、「ポストアプロプリエーションとしての写真」(『カメラのみぞ知る』[図録]、ユミコチバアソシエイツほか、2015年)、「戦争と銅版画――浜田知明の『戦争』画について」(『前夜/前線―クリティカル・アーカイヴ vol.2』、ユミコチバアソシエイツ、2014年)、「生存のレオロジー――ゾエ・レオナードにおける生政治」(『引込線 2013』[図録]、引込線実行委員会、2013年)などがある。近年の展覧会に、「雲をつかむできごと 石川卓磨+多田由美子 Vol.1」( Gallery TURNAROUND、2017年)、 「犬死にか否か」(TALION GALLERY 、2017年)、「第9回恵比寿映像祭『マルチプルな未来』」(東京都写真美術館、2017年)、「教えと伝わり|Lessons and Conveyance」(TALION GALLERY、2016年)などがある。

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12月17日(日)15:00〜
Pre Ongoing School
作家本人による展示作品の解説を交えてのレクチャー。お好きなケーキとお飲物がついてきます。

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12月17日(日)19:00~
トークイベント:美術を印刷物にすること| ⑵ 「RONDADE」とは何か
ゲスト:佐久間 磨(編集者、RONADADE)
聞き手:伊丹豪(写真家)、川村格夫(デザイナー、ten pieces)

佐久間磨
書籍などのプロダクト企画や、エキシビション/イベント企画、出版物編集。さまざまなアートフォームを 創造の初期衝動に立ち返り、既成の枠にとらわれない形と方法で現化することを目的にRondadeを設立。

伊丹豪
写真家。1976年生まれ、徳島県出身。
第27回写真の会賞受賞。写真集『study』、『this year’s model』、『photocopy』(RONDADE)など。
https://www.goitami.jp  

川村格夫
自由学園最高学部、東京藝術大学卒業後、デザイナーとして活動しながら、2010~2011年には埼玉県北本市の臨時職員として市役所内外のデザイン業務を担当。2015年~2016年には文化庁在外研修制度を利用し米国ニューヨークで研修に従事、2013年から自由学園最高学部で非常勤講師を務める。現在横浜市在住。

印刷物デザイン:川村格夫(ten pieces)
協力:ユミコチバアソシエイツ

Art Center Ongoingでは2014年以来、4回目の個展となった冨井大裕の『turn』。日用品を用いた彫刻作品で知られる冨井。ただOngoingの展示では、代名詞ともいえるそうした作品だけでなく、毎回新しいチャレンジを見せてくれるのだが、今回は紙一枚をもちいた新シリーズを展開。本展にあたり、冨井からは以下のような作品の工程の説明が送られてきた。⑴紙に絵の具を塗る⑵塗ったところを切り抜く⑶それを裏返す⑷裏返したもの同士を繋げる→完成。色彩のあるレリーフと本人が名付けたように、形の上に色を塗るのではなく、色/絵の具を塗るということを形にしていくという作業。あくまで彫刻家でありながら、絵画の領域に足を踏み入れる試みだろうか。回転させる、向き・状態を変えるという意味をもつ本展のタイトルだが、紙を裏返すだけではない、美術が持つジャンルあるいは制度に対するメタファーも感じる。絵画なのか彫刻なのか、あるいはそのどちらでもないのか。概念の境界線上に作品を立ち上げる作家ならでは野心がペラペラの1枚の紙に宿る。 
小川希(Art Center Ongoing)

冨井大裕

1973年新潟県生まれ、東京都在住。既製品に最小限の手を加えることで、それらを固定された意味から解放し、色や形をそなえた造形要素として、「彫刻」のあらたな可能性を模索する。また、2008年よりアーカススタジオにて、作品が […]