Art Center Ongoing

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最悪なことはまた起こるのか、最悪なことはあじわいたくない。

榎本耕一

2020.12.02 [水] - 2020.12.13 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(お菓子付き)

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4月18日(土)19:00~
インターネット配信トーク
「マンガ的人間、マンガ的風景」
登壇:眞島竜男(アーティスト)、地主麻衣子(アーティスト)、千葉正也(画家)、榎本耕一(画家)
https://youtu.be/mM1FkEJrTIo

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12月3日(木)19:00〜
「オンゴーイング・スタジオ 2020/12/03」
Pre Ongoing School
https://youtu.be/-NokSu9hs-8

この度Art Center Ongoingでは、榎本耕一(えのもとこういち)による個展「最悪なことはまた起こるのか。最悪なことはあじわいたくない。」を開催いたします。
榎本耕一は1977年大阪府生まれ。金沢市立美術工芸大学卒業、同大学院修士課程中退。これまでは主に油彩を用い、あらゆるイメージが複雑に重なり合う高密度で力強い絵画作品を発表してきました。また本年2月には写真展を開催するなど、自身の表現手法を更新し続けています。  
本展「最悪なことはまた起こるのか。最悪なことはあじわいたくない。」では新たな展開として、漫画作品を発表いたします。この物語の主人公は、現代のとある家族です。ある日、彼らの上空に突然落下傘が現れ「ピカッ」という強烈な閃光を放ちます。その直後、景色は暗転し、三人の家族はそれぞれに奇怪な世界へと巻き込まれていきます。
この家族が遭遇した強烈な閃光は、限りなく「原爆のようなもの」でありながら、作中でその正体が明言されることはありません。榎本は「実際に被爆した人が、自分が何にやられたのかわからない、そのわからなさをキープしたいと思っている」と語ります。「自分が何をされたかわからない、その大きな事」が本作品のテーマなのです。
このテーマに至るまでに、多くの書籍、絵との出会いや体験が榎本の中に蓄積されてきました。丸木位里・俊の「原爆の図」、大江健三郎の「ヒロシマ・ノート」、石牟礼道子、古事記、更級日記、古典、折口信夫、和歌……。さらに東日本大震災による原発事故も、広島、長崎に続く3回目の放射能の脅威として榎本の記憶に刻まれました。それらが蓄積され、結びつき、本作品は生み出されました。
その中でも、原爆の惨状を伝える丸木位里・俊の本「ピカドン」に収録されている一枚の絵が、本作品にとって重要な存在であり、作中にも引用されています。焦土に立つ枯れ木に「爆心地の話をつたえてくれる人はいません。」という一文が添えられたその絵を見た時、榎本は特に「最悪な感じ」を受けたと言います。太陽にも匹敵するような熱線により一瞬で焼け死んだ人々は、その最悪な体験について語る術を持ち得ません。「最悪をイメージするには、想像力を使うしかない」と榎本は語ります。
作家の想像力によって立ち現れる死の向こう側の光景とは、一体どのようなものなのでしょうか。榎本は、緻密な描写力と圧倒的な表現力により、作品世界を紡ぎ出します。また漫画というメディアの特有性により、作家の中に湧き上がるビジョンを鮮明に表現することが出来るのです。
現在、コロナ禍にある私たちもまた、正体の不明確な大きな脅威と対峙しています。最悪なことは決して遠い過去の出来事ではなく、人々の記憶にある限り今も続いており、これからも繰り返される可能性を常にはらんでいます。今必見の榎本の作品世界を、ぜひ多くの方に直接ご覧いただければと思います。
(篠原佳那) 

榎本耕一

1977 大阪府に生まれる。2003 金沢市立美術工芸大学 修士課程中退神奈川にて制作、活動 個展2021 「あいまいのしるし」金沢アートグミ、石川2020 「NEW LIFE !!」 TARO NASU、東京「わたくし […]