Art Center Ongoing

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かみの上のあした

青木真莉子

2020.03.25 [水] - 2020.04.05 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(お菓子付き)

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4月4日(土)19:00~
インターネット配信トーク
「作品を売ること・作品を買うことについてOngoingで話してみる」
登壇:東野哲史(アーティスト)、衣川明子(画家)、吉崎ゆきえ(Art Center Ongoing)
https://youtu.be/i27mJwuiopo

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4月5日(日)15:00~
インターネット配信レクチャー
Pre Ongoing School
https://youtu.be/C4Zm6HlhytQ

作家本人による展示作品の解説を交えてのレクチャーをインターネットで配信します。

青木の言っていることは、ほとんどわからない。日常的な会話についてではない。自身の作品に関して彼女が話す内容がだ。よくタラタラと全く面白くない作品のコンセプトを話す全く面白くない作家がいるけれど、それとは全然違う。事実、彼女の作品はめちゃくちゃ面白い。じーっと見てしまう。ただ、青木が自分の作品について語り出すと、今私たちが生きているこの世界のことを話しているようには到底思えないのだ。いうなれば学研のムーに載っていそうな解説に近い。
もちろん青木は、ただのオカルト野郎ではない。僕は彼女の感覚をかなり信頼している。なんだかんだ青木との付き合いも随分長くなったが、Ongoing以外でも、タイのチェンマイでのレジデンス企画や、石川県の奥能登で開催された国際芸術祭でのグループ展にも参加してもらった。そういった見知らぬ土地にいくと、僕はまず彼女に「なんか感じる?」とか「なんかいる?」とか聞いてみる。そうすると「黒いモサモサしたのが見えた」とか「結構たくさんいるね」とか、しれっと教えてくれるのだ。鬼太郎の妖怪アンテナのような能力。まあ大抵は「悪い感じではないから大丈夫」と安心させてくれるから、展覧会に集中できるのだが。
「この世界に存在する全てのものには魂があって、それらの魂は独自の時間や次元の概念を持っていて、それぞれが固有の世界を展開している」といったことを青木はよく話してくれる。アニミズム的な思考なのだろうけど、それが本人による作品解説の一部に入ってくると、聞いている皆は、ポカーンとしてしまう。でも作品それ自体が面白いから、まあいいかってなる。でもいざ青木の作品の面白さを、皆がわかるように伝えようとすると、的確な言葉を見つけるのが難しいことに気づく。ビビットな色彩感覚、空間を構成する素材選択のセンス、映像編集のオリジナルな間、などと青木の作品を語ろうとしても、どれも陳腐に聞こえてしまう。やはり私たちが生きているこの世界の言葉では、彼女の作品の面白さを描写することは困難なのだろうか。むずがゆい。
などと思いながら、今回の青木の個展を観てみた。今回はドローイング中心で、本人曰く「2011年から作品に登場してきたひと達の、明日の記録を描いた絵」なのだそう。明日の記録ってなんだよ、またよくわかんねーこと言ってるなー、と展示を見る前は思っていたのだが、作品を目にしたらビビッときてしまった。すっかり記憶から消し去っていた、青木の作り上げてきたインスタレーション、立体、映像作品を構成していた様々な要素が、その画面の中に生き生きと描かれていた。最近はこんな風に過ごしているんだとか、こんな場所に住んでいるんだとか、あいつとも知り合いだったんだねとか。そしたら急に、彼女がよく話してくれる、それぞれの魂の時間や固有の世界についてのあの言葉が思い出されて、あっ、そういうことだったのかと、妙に納得してしまったのだった。やっぱり青木の作品はめちゃくちゃ面白いし、ただ依然としてあいつの言葉はほとんどわからないけど、多分、いやきっと、あってはいるのだろう。
小川希(Art Center Ongoing)

青木真莉子

1985年埼玉県生まれのアーティスト。 東京を拠点に活動。 ビデオ、写真、絵画、衣服、立体を使ったインスタレーションを制作。 様々な民族のアニミズムに基づいて目の前の世界を再構築し、見たことがあるようでない風景を作ろうと […]