Art Center Ongoing

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山本高之

2020.02.19 [水] - 2020.03.01 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(セレクト・ティー付き)

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2月22日(土)19:00~
オープニングパーティー

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2月29日(土)19:00~
トークイベント(トーク終了後にクロージングパーティー)
ゲスト:若山満大(アーツ前橋)

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3月1日(日)15:00~
Pre Ongoing School
作家本人による展示作品の解説を交えてのレクチャー。

「チュラチュラチュラチュラチュラチュララー チュラチュラチュラチュララー」
檻の中の動物を背にし、子供たちがこちらに向かって合唱している。そわそわと落ち着きがない子や、音程が全然あってない子も少なからずいて、なんともぎこちない変な感じがジワっと伝わってくる。なんなんだこの映像は!?   初めて覚える感覚、と同時に、えもいわれぬ笑いがこみ上げてくる。今から10年前、大きな芸術祭で『どうぶつたちの一週間』というタイトルの映像作品を見た時のことだ。
あの映像と歌が頭から離れなくなってしまった僕は、まったく面識もないその作者、山本高之さんにすぐに仕事の依頼をしたのだった。依頼は二つあって、一つは子供向けのワークショップ、一つはOngoingでの個展だった。山本さんはどちらも引き受けてくれて、まずは打ち合わせをすることに。子供向けのワークショップといってもあの狂気の作品を作った作家である。どんな人がやって来るのかとワクワクして待っていたが、現れたのはぶっきらぼうで目つきの鋭い男。正直をいえば、そのときの打ち合わせからは、子供たちと一緒にワークショップをしている山本さんの姿を想像するのは難しく、こんな感じでは怖がってしまう子さえ出てきてしまうのではないかと。
そしてワークショップ当日、山本さんは変わらずあのぶっきらぼうのまま、子供たちに接するのだった。ワークショップの講師にいそうな優しい大人達とは真逆。参加している子供に気を使うなんて一切せずに、山本さんはどんどんと距離を縮めていく。そして気づけば子供たちの絶大な信頼を獲得しているのだった。山本さんの制作の秘密を少し垣間見た気がした。
おそらく、山本さんが行なっている子供たちとのワークショップは、一般に行われているそれとは全く違うものなのだろう。子供という、文字通りまだ大人になっていない、つまりは大人の価値観が通用しない、言い換えれば得体の知れない存在と一緒になって作り上げる共同制作。子供たちをコントロールするのではなく、むしろ同化していくかのような山本さんの制作の秘密。そして生まれるのが、あの笑えるけれどゾッとする作品なのだ。
今回、Ongoingの個展で発表する作品には、これまでよりも、より大人に近い年齢の子供たちが登場する。ただやはり、そこに映しだされるのは、ステレオタイプの装いを剥ぎ取られた、むき出しの存在だ。そしてもう一つ、僕が今回もまた山本さんの作品をみた後に思い知らされたのは、自分たち自身もこうした子供=得体の知れない存在だった時が確実にあったのだということ。私たちは、どこから来て、どこへ行くのか、そしてまた、いったい誰なのか。 
小川希(Art Center Ongoing)

山本高之

1974年愛知県生まれ。子どもの会話や遊びに潜在する創造的な感性を通じて、普段は意識することのない制度や慣習の特殊性や個人と社会の関係性を描き出してきた。近年は地域コミュニティと協働して実施するプロジェクトや、一般を対象 […]