Art Center Ongoing

SEARCH EXHIBITION & ARTISTS

double-double

Laetitia Morais

2019.11.27 [水] - 2019.12.01 [日]
12:00-21:00 入場料:¥400(セレクト・ティー付き)

【仕事モード】と【仕事をしていないときのモード】で人々のふるまいが変わるということは、日本文化とヨーロッパ文化のちがいとしてよく挙げられる点です。本展覧会では、こうした日本社会に見られる様々な【型のようなもの】について考えるための「出会い」を用意します。

私はポルトガルで生まれ育ったので、私の頭の中にあるアジア文化に対するイメージは必然的に西洋化されたものです。ですが、それだからこそ持てるメタ視点で、日本の皆さんとは異なる考え方や組み合わせを提示することができると思います。

本展覧会タイトル『double-double』には、2つ意味があります。まずひとつめは私の外国人としての視点に関係があります。
もうひとつはOngoingの2階屋上(*訳注)で行った短いコラボレーションに由来します。私たちは屋上で、アンダーグラウンドカルチャーシーンについての対話を行い、さまざまな形でアンダーグラウンドカルチャーを「上の階」に持ち込みました。
このようにして日本的な「秩序」と「無秩序」を行き来する構造を考えました。

本音と建前が絡まりあう社会的言動や、高級素材(木材や和紙など)でつくられたフェイクな複製品。あるいは会社における規則、そして仕事(後)の飲み会。日本社会には、人々が「規律正しく振舞う場面」と「制御不能になる場面」の両極端のものが同居しているように思えます。私は、日本の「自然(台風、地震、山など)」と「目に見えないものを重んじる文化・精神性」の両方が、こういった日本人の気質に影響しているのではないかと推測しています。

10月初めにスタートしたこの東京滞在で、私はunder-ground(地下)& above-ground(地上)のシーンで、いろいろな話、もの、イメージに出会いました。本展覧会では、これらの「出会い」を組み合わせ、日本社会システムの課題をうつしだす形で再構築を試みます。

Laetitia Morais

(*訳注:日本ではOngoingの屋上は3階にあたるが、ヨーロッパではGround floor<日本の1階>、1st floor<日本の2階>、2nd floor<日本の3階>という形で、日本の感覚と1つずれる。そのためLaetitiaにとってOngoingの屋上階は2階となる。)

SPECIAL THANKS TO:
Art Center Ongoing
Nozomu Ogawa
Atsuhiro Ito
Aida Mizuki
Masaharu Kuramochi Giaco Schiesser
Fundação Oriente
The National Museum of Art Okutama (MOAO)

Laetitia Morais (レティシア・モライス)は1984年パリ生まれ、ポルト在住。2006年、ポルト大学芸術学部絵画科修士課程修了。2008年より、チューリッヒ芸術大学、リンツ工科造形芸術大学の博士課程でリサーチを行っている。これまでポルトガルを中心にヨーロッパ各地で作品を発表し、ニューヨーク、アゾレス諸島、アブダビを含む様々な所で滞在制作を行ってきた。日本およびアジア滞在は今回が初めてである。
Laetitiaの制作活動は、特定のメディアやテーマに限定されない。制作場所の環境、文化、出会いから着想を得て一見まったく異なる事象を点で繋ぎ、新たな星座をつくるかのように制作する。そして「展覧会」を「自分の経験にてざわりを与えること」と位置付けている。
彼女はこれまで様々なものを作品に取り込んできた。土地の文化、歴史、社会問題、存在と不在、個人、人間、植物、ミネラル、エチオピアのジャズ、19世紀のヨーロッパ文学、21世紀のアメリカ文学、移動と適応、フランス料理、左翼vs右翼、遊牧民の詩人、偶然性、西洋vs東洋vs中東vs中西、境界線、異教徒の儀式、サイケデリックドラッグ、経済構造、翻訳プロセス、ニューエイジ・メディテーション、実験映画、秩序vs無秩序など、例に挙げると、リストはまだまだ続く。
2018年、The Arquipélago Contemporary Arts Centreの個展「La Longue Durée:  structure, conjoncture,  évènement」では、サウジアラビアの砂漠で3週間テント無しで野宿をして制作した作品を発表。SFの父と呼ばれるジュール・ヴェルヌの恋愛小説『緑の光線』(1882)をもとに、砂漠の国境近くにたたずむ男女2人の会話を撮影した映像作品、油田開発からキャッチできるラジオ波、砂漠でみつけたオブジェクト、ドローイングなどから構成された展覧会となった。
このときの制作で、Laetitiaはすっかり砂漠に魅了されたと話す。「アブダビ(UAE)にも行きましたが、街はイスラムの戒律が厳しくてお酒が飲めないんです。つねに監視されコントロールが行き届いている。だからパーティーがしたいとき、人々は砂漠に行くんです。砂漠で思うまま過ごして、また街に戻る。街が【完璧にコントトールされた場所】であるのに対して、砂漠が【コントロールから逃れて自由になる場所】として機能していて興味深い」。
今回のレジデンスで、アジア初滞在のLaetitiaは「私の日本観はとても西洋的かもしれないけど」と前置きしながら「日本ではみんな礼儀正しくルールを守り安全に暮らしている。でもだからこそ(中東の砂漠のように)人々がコントロールから逃れて自由になる場があるのではないか」と話していた。果たしてこの2ヶ月間でLaetitiaはなにを見つけたのだろうか?日本に住む私たちが気づいていない、自由な場所/時間/構造を、彼女が見せてくれるかもしれない。 
(吉﨑ゆきえ)
No image

Laetitia Morais

coming soon…