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愛と風  キッチンでホックニー

利部志穂

2019.07.03 [水] - 2019.07.14 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(セレクト・ティー付き)

愛と風  
キッチンでホックニー

真っ暗闇で、震えて目が覚める。
心配になったり、不安になって、恐怖する。

頭が急に正気になった時、
静けさが恐ろしくなった時。

エッチな動画を流すと、オバケはいなくなるらしい。
ストックが無いので、お守りみたいに欲しい。
悪霊退散。

彼女の笑顔は、とても明るくて、
以前会った時よりも、ずっと軽やかだった。
私は疑問だった。

小さな女の子は、
美味しいものが好き。甘くて色々な色の。
綺麗な靴が好き。
煌びやかなアクセサリーが好き。
ハートや星やラメが好き。
沢山の軽くて大きすぎる装飾品を
身につけて見せる。

キッチンでは、明るいプールサイドを想う。
何度も繰り返し行ったり来たり、
半径2km の調達と、下ごしらえ。
数時間後の工程の都合が、遠くまで出られない。
真昼間の静けさは地獄。

何度もやる気の起きないヌードを描かされた。
エロい気持ちにもならないので、これがいいとか悪いとか、
この部分が好きとか嫌いとか。ある訳も無い。

ゴヤのスキャンダラスな隠毛も、もうつまらない。
でも、また日本では騒がしく

男の子は沢山の名前が好き。
より多くを知っていることが好き。
一つでも多い数が好き。
大きいものが好き。ゲームが好き。
とにかく隣りのものもどんどん増やして
大きくするのが好き。

男のようなもの、女の中にいる、男のようなもの。
戦いたくてたまらない、たたく。誰かを。
燃やす。沢山のものを燃やす。

男のようなものは、戦いたがって、
すぐに戦争をする
女の子のようなものは
必ず巡り巡って、微笑みを浮かべる。

金の靴は好き。履かせてあげたい。
膝を閉じて座る少女。

大変、繊細な気遣いがない人にはできません。
若い女の、経済的価値。
仕事のセックスは不純物無し。透明な
感情とは切り離されたもの
セックスは単純に面白いって思ったから、人に踏み込むこと
身体的に、難しくて、必要としている人がいること
彼女は答えた。

そこまでの関係じゃないよ。残念ながら

ただ、思いやりがなかったこと。

優しく包み込み、流れていく。

タナトスにまみれた私は、
彼女の明るく、強い、女のようなものに

レンズを、目を合わせ、
手を合わせ、お化けを遠ざけるように
頭から風を浴びる

利部志穂
2019.7.3

本展覧会、作品は、
※18世紀ロマン主義の画家、フランシスコ・デ・ゴヤの 絵画作品「着衣のマハ」「裸のマハ」へのオマージュが含まれます。
※日本のセックスワーカー、実在する人物へのインタビューを交えています。

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7月6日(土)19:00~
オープニング・パーティー

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7月12日(金)20:00~
トークイベント
「愛と風 キッチンでホックニー」
出演:利部志穂 x 宝田もなみ(セクシー女優)

エロ x 戦争 x タブー x 宗教 x 家族 x 国家について、今を輝くセクシー女優の宝田モナミさんをゲストにお迎えして、色々なこと、おしゃべりしながら、考えていきます!

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7月14日(日)15:00~
Pre Ongoing School
作家本人による展示作品の解説を交えてのレクチャー。お好きなケーキとお飲物がついてきます。

この度Art Center Ongoingの空間では約4年半ぶりとなる、利部志穂個展『愛と風 キッチンでホックニー』を開催いたします。
利部志穂(かがぶしほ)は2007年に多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了。国内外問わず広く活躍、数多くの個展やグループ展に参加するなど勢力的に活動を続けています。
利部はこれまで彫刻を根底に置きながら、パフォーマンス、映像、ペインティング、詩などを自在に掛け合わせた空間を作り上げ、一体感を伴うインスタレーション作品を展開してきました。
形成と変形を絶えず繰り返すことにより出現する空間は、全体の一体感と同時に細部一つ一つの繊細さにも驚かされます。あえてストーリー性を崩壊させるという彼女の作品空間は、それぞれのものたちが意味や役割を失いつつ、新たな次元へと向かっていく過程も持ち合わせており、制作と同時に浮かんでくるという詩的で断片的な言葉たちはわたしたち鑑賞者の想像力を膨らませてくれます。
文化庁在外派遣研修員として二年間滞在したイタリア・ミラノでの生活は、彼女自身に大きな影響を与えることになりました。宗教観や現地の人々との関わりあい、また日常的に食べる料理などの実体験は、今回の展示にも色濃く反映されているといえます。
利部は作家としての存在と家族の中での母という存在の二つを持ち合わせています。極力二つの場所を分けたくないという彼女はキッチンでも制作を行い、どちらにも所属している状態を保ち続けます。家という閉ざされた空間の中で育まれる豊かさと困難さは彼女自身の問題を飛び越え、私たちにも共鳴する部分がきっとあるはずです。
利部は詰まりすぎている生活への「抜け」が必要だと話します。それは今回の展示タイトルにもあるような風の存在であり、キッチンでふと画家のデイヴィッド・ホックニーの絵を見るようなことなのかもしれません。利部の作り出す作品群をOngoingの空間で是非ご覧いただければと思います。
(吉瀬さくら)

利部志穂

1981年神奈川県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2014年KAKEHASHI Projectにてニューヨーク、LA滞在。2017年より文化庁新進芸術家海外研修制度の助成を得て、2年間ミラノを拠点に活動 […]