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宇宙英雄ペリーローダンと私の生活

千葉正也

2018.08.22 [水] - 2018.09.02 [日]
12:00-21:00 定休:月、火 入場料:¥400(セレクト・ティー付き)

(c)Masaya Chiba, courtesy of ShugoArts
photo: Shigeo Muto

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8月25日(土)19:00~
オープニングパーティー

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9月2日(日)19:00〜
「俺が狂ったのは奴らのせいさ」
出演:角田俊也、サイプレス上野、千葉正也

協力:ShugoArts

「彼の展覧会によせて」

彼とはじめて会ったのは、造船工場の倉庫を改造した今はもうなくなってしまったアートスペースの2階だったと思う。もう10年以上も前の話。私は自分の企画する展覧会の下見に訪れていたのだけど、そこにガラが悪いといっても差し支えのない、凄みのある若いアーティストが5、6人たむろしていて、その中でも、ひときわ背が高く、他と異なるオーラをまとい、彼らの中心にいた男が「こんちわー」とニコニコしながら挨拶してきたのだった。
当時、彼はアーティストグループを作っていて、彼らと共にそこにスタジオを構えていた。どんな作品を作っているかも知らなかったけど、知人のアーティストのことや、自分たちの好きな美術や音楽の話、それとどうでもいいくだらない話など、はじめてにも関わらずいろんなエピソードを人懐っこく話してくれて、そのどれもがとても面白く、独特の存在感もあいまってか、すぐに彼に魅了されてしまったのである。
それから数年後、私は小さなアートスペースを立ち上げ、彼はといえば、アート関係者なら誰もが知るギャラリーに所属するようになっていた。共通の知人のアーティストが多くいることもあってか、オープニングパーティーにも時々足を運んでくれたり、彼が考案したイベントを私のスペースで開催してくれたりもした。そんな時は決まって大きな人だかりができ、その中心で彼はまたいろいろなエピソードを屈託のない笑顔で皆に披露しているのだった。年齢や性別を問わず、出会った人々を魅了する力を彼は持っている。カリスマ性といってもいいだろうか。
そのような感じで、つかず離れずの関係は続いていたのだけれど、実際に彼の作品をこの目で見たのは出会ってから数年経ってからのことだ。もちろん、メディアを通じて彼の作品に触れることは何度もあったけれど、実物を見た時にそれまで抱いたことのない驚きを覚えたのだった。その画面には、色々なオブジェクトが並んでいた。精密に描かれたそれらは、お互いに何らかの関係性があるようなのだけれど、どれも定かではない。背景に流れる物語のようなものも浮かび上がってきそうなのだが、個々に描かれた事物の存在が際立ち、全体像を掴むことができない。ただ、オブジェとオブジェのおぼろげな関係性あるいは連続性から、豊かなイマジネーションが喚起され、そこから抜け出せなくなっている自分がいた。四角い画面の中に閉じ込められ彷徨う視線。あぁ、これこそが、あのカリスマ性を持った彼が手がける作品なのだなと思った。
今回、彼は、私の小さなアートスペースではじめての個展を開催する。展覧会のタイトルには「推定世界で2番目に長い小説シリーズ」とされるSFの登場人物の名前が使われ、それに並んで「私の生活」とある。彼のことだ、会場には様々な要素が散りばめられ、それぞれが関係しているようでありながら、その全体像は決してつかむことのできない空間が浮かび上がってくることだろう。一度入り込んだら抜け出ることのできないあの感覚。さて、そろそろ彼の魅惑の世界に足を踏み入れるとしよう。いつもと変わらず様々なエピソード携えて彼は私たちを迎え入れてくれるだろうから。

千葉正也

1980年神奈川県生まれ。東京都在住。千葉の作品は、自作したモチーフを繰り返し用いたり、取り巻く環境や過去の出来事から採取したイメージをキャンバス上に再現したりと、自ら選んだ対象に何度でも立ち返り、能動的に関わるプロセス […]